3.1.1 金属材料の延性-脆性転移温度(Ductile-Brittle Transition Temperature ; DBTT)について
鉄鋼材料だけではなく全ての金属材料に当てはまる現象なので最初に説明しておきます。材料の強化には固溶強化、析出強化、加工硬化、結晶粒微細化など種々の方法がありますが、これらの強化法のうち結晶粒微細化を除く強化方法ではぜい性応力は上昇せず、その結果延性-脆性転移温度(DBTT)は高温側へ移行します。また多軸応力や切欠などの塑性拘束や高速変形でもDBTTが高温側へ移行します(参考文献1)。図1はその状況を説明する図です。一方、図2に示していますように結晶粒微細化では結晶粒が微細になればなるほど降伏応力が上昇しDBTTは低温側へ移行します。その結果、より安全性の高い材料になります。
図1 金属材料の降伏点とぜい性破壊応力の温度依存性の説明図
参考文献1:日本金属学会編、講座現在の金属学 材料編4「鉄鋼材料」,p.61 .